唾液腺の病気
唾液腺は、耳下腺・顎下腺・舌下腺の3対の大唾液腺と、口腔・咽頭粘膜表面に多数散在する小唾液腺があります。大唾液腺で作られた唾液は、管を通り口腔内に分泌されます。唾液は、食物を消化し、口腔内を湿らせ、清潔に保つ作用があります。
流行性耳下腺炎(おたふく風邪)
幼小児に多いのですが成人も罹患します。耳下腺・顎下腺をおかすのみならず、睾丸炎・膵炎・髄膜炎・内耳炎等を合併することがあります。内耳炎では高度難聴を起こすことが知られています。予防注射は1回では確実でありませんが、2~3回するとかなり効果があります。
小児反復性耳下腺炎
「おたふく風邪をなぜ繰り返すのかしら?」と思っておられるお子さんの多くはこの病気です。唾液腺造影検査(口腔内より唾液管に1cc程の造影剤を注入しレントゲンを撮影)で唾液管の拡張が認められます。広がった管内に唾液がうっ滞して感染を反復しますが、大人になるにつれておさまります。
シェーグレン症候群
耳下腺・涙腺が腫れ、分泌低下により口腔、眼、皮膚などの乾燥状態を来たす病気です。女性に多く、慢性関節リウマチなど膠原病との合併が多く認められます。血液検査・唾液腺造影で特徴的な所見を示します。
唾石
顎下腺に好発します。食事のたびに、顎下部もしくは耳下部の鈍痛・腫脹を返します。手術が必要です。
唾液腺腫瘍
良性耳下腺腫瘍が最も多いですが、再発し易く放置しておくと癌化の可能性もあり、完全摘出術が必要です。しかし、耳下腺の中を、顔面神経という顔の筋肉を動かす大切な神経が走っています。この神経を保存しながら、腫瘍を完全摘出することは簡単ではなく習熟した医師が行わなければなりません。
甲状腺の病気
甲状腺は、前頸部の浅い所にあり、病気が有るか無いかは、ほとんど触診でわかります。しかし、難しいのはどのような病気かということです。甲状腺が全体的に腫れる場合は、単純性甲状腺腫、バセドウ病、甲状腺炎で、これは血液検査で区別がほぼ可能です。しかし甲状腺の一部が瘤(コブ)状に腫れる場合は甲状腺良性腫瘍、甲状腺癌、時に甲状腺炎で、腫瘍、特に癌との区別が困難です。血液検査のほか、レントゲン、超音波、CT検査、シンチグラム、針生検等を行います。
単純性甲状腺腫
主に若い女性で、特に病気がないのに、甲状腺が腫脹することがあります。
バセドウ病
甲状腺が膨脹し、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるため、汗をかきやすい、食欲は亢進するのに体重減少、動悸などが起こり、長く放置すると眼球突出を来すことがあります。初期のものは抗甲状腺剤、進んだものには手術または放射性ヨードの投与などを行います。
甲状腺炎
亜急性甲状腺炎
ウイルス感染によるものと思われ、発熱とともに甲状腺が痛み、腫れます。薬物治療で多くは数ヵ月で軽快します。
慢性甲状腺炎(橋本病)
甲状腺の自己免疫疾患です。腫瘍との区別が問題となります。甲状腺ホルモンの分泌が悪くなると、甲状腺ホルモンの投与を行います。
甲状腺良性腫瘍
腺腫はよほどの大きくない限り経過観察で済みます。腺腫様甲状腺腫といって、腺腫のような病変が多発する病気があります。癌との区別が難しい場合は切除します。
甲状腺がん
頭頸部癌のほとんどは男性に多いですが、甲状腺癌の約9割が女性です。しかし、予後の比較的良い分化癌が多く、遠隔転移がなければ、甲状腺と頸部リンパ節に対する手術で多くは根治可能です。逆に甲状腺未分化癌は少数ですが、極めて悪性度が高く、放射線・手術等行っても予後不良です。
唾液腺と甲状腺は、直接手で触れることができる数少ない臓器です。腫れている場合、一度専門医を受診しましょう。