ダイビングによる難聴
最近のダイビングブームで手軽に海中の景色と浮遊感を味わえるようになった反面、さまざまな事故が発生するようになりました。ダイビングでは飛行機や登山とは比較にならないほど圧変化を受けるため、中耳腔の空気を調整しなければ水深3mで鼓膜は破れてしまいます。
ダイビングによる難聴の原因
通常、スポーツダイビングでは30m位まで潜ると、そこでは4気圧の水圧がかかるため中耳腔の空気の体積は4分の1になります。この不足分の空気を耳管を介して中耳に送り込む必要があります(耳抜き)。反対に浮上するときは中耳腔の空気の体積は4倍になるため、今度は中耳腔から追い出さなくてはいけません。
この調整がうまくいかないと鼓膜や内耳窓が内側や外側に引っ張られ、中耳や内耳に負担がかかり、何らかの耳のトラブルの原因となります。特に初心者やカゼにかかっている時、鼻アレルギー、副鼻腔炎などの鼻疾患を持っている場合などは耳抜きがうまくいかないことが多く、注意が必要です。
ダイビングによる主な耳のトラブル
主な耳のトラブルとして、鼓膜穿孔、中耳腔内出血、中耳腔内滲出液貯溜、内耳圧外傷(内耳窓破裂を含む)、内耳減圧症などがあり、いろいろなタイプの難聴や耳鳴、耳閉感、めまいなどが生じます。
症例:24歳男性
カゼ気味の時にダイビングを行い、左耳は耳抜きが困難で、潜降中に耳痛を感じた。我慢して最大水深20m、35分間のダイビングを終了しましたが、左耳閉感、難聴感が強く、2日後に来院されました。
左鼓膜は内側にへこんで(内陥して)おり、血性滲出液の貯留が認められました。聴力は、オージオグラムで左伝音難聴を示し(図1)、ティンパノグラムはB型でした。
治療は、次回のダイビングに支障が出ないように鼓膜切開は避け、鼻とのどの処置、耳管通気療法、そしてカゼに対する処方を行い、2週間後に自覚症状と聴力検査により治癒を確認しました。
ダイビングによる耳のトラブルを防ぐには
対策としては次のようなことが挙げられます。
- 事前に十分な指導を受けてください。海に潜る前のプール講習は必須です。
- カゼにかかっているとき、鼻疾患増悪時は潜らないようにしましょう。
- ゆっくりとした潜水、浮上を心がけましょう。
- 耳抜きがうまくできない場合は無理をせず、潜水を中止してください。
- 終了後に耳に異常を感じたら、それ以後のダイビングを中止してください。
その他のスポーツによる難聴
陸上競技のビストルや射撃で音響外傷、騒音性難聴を、剣道で外傷性鼓膜穿孔を、各種格闘技で側頭骨骨折、外傷性鼓膜穿孔などを生じることがあります。